Research Introduction of Coronavirus Disease 2019(COVID-19) 新型コロナウイルス感染症に関する研究紹介

ご挨拶
GREETING

 現在生きている人たちにとって、新型コロナウイルス(COVID-19)は、いまだかつてない経験です。これまでSARS、MERS、エボラなどの感染症の流行を見てきましたが、地域における限定的な流行でした。しかるにCOVID-19は、全世界を巻き込む未曽有の人類の危機です。COVID-19を予防するための抜本的な解決法は、新規のワクチンと治療薬の開発に他なりません。
 金沢大学医薬保健研究域では、COVID-19の克服のために、伝統的な基礎および臨床研究力を生かし、ワクチンおよび治療薬の開発等に関わる研究を行っております。特にワクチン開発に重要な点は、免疫学を中心とした医学的根拠に基づいた基礎的研究です。倉知教授は「T 細胞免疫記憶と疲弊現象に着目したワクチン開発研究」を推し進め、パイオニア転写因子とクロマチン構造を切り口としてT細胞活性化の分子機序を明らかにし、ワクチンへの応用やT細胞疲弊からの回復を目指します。また新規ワクチンがすべての人に持続的な効果があり、また副作用を起こさないという上でも、これまでのワクチン研究の蓄積が重要です。吉田教授は、マラリア感染症ワクチンの開発研究の実績から、「マラリア感染ワクチンにおいて開発した次世代型ワクチンプラットフォームを用いたワクチン開発」を手掛け、最も実用的なワクチンの開発を行っております。伝統的な臨床研究力の点では、渡部教授は「重症化のサイトカインストームと抗体依存性感染増強との関係に着目した新薬開発研究」を行っており、またWong教授はNano医工学技術を生かし、「核膜孔を構成するタンパク質に着目した新規薬剤開発研究」を行っております。高松先生は「T細胞免疫のモニタリング」、石崎先生は「SARS-CoV-2特異的中和抗体のモニタリング」を通して、COVID-19の重症化に対する免疫学的機序を解明し、重症化予防法の案出を研究しております。
 この度、三井住友信託銀行との間において「新型コロナワクチン・治療薬開発寄付口座」を設置し、その寄付金を基に、現在、上記の6つの研究グループが、その支援を受けて研究を鋭意、進めております。ここにそのご支援を厚く御礼申し上げます。
 COVID-19が一日も早い終息を迎え、再び安心して暮らせる日常を取り戻せるよう、金沢大学医薬保健研究域はCOVID-19の研究に邁進し、その研究成果がCOVID-19の克服に役に立てるよう尽力する所存でございます。皆様方の今後とも一層のご支援を賜りたく、お願い申し上げます。

金沢大学医薬保健研究域長 中村裕之